ブランド志向とは何なのか、その原因について考察する

世の中には多くのブランドが存在する。そして、そのブランドを求める人をブランド志向であるという。このブランド志向とは何なのか、そして、その心理について論じ、ブランド志向の将来について予測する。

 

ブランド志向とは

ここでは、ブランド志向を、「それがブランド品である」という理由で高く評価し、欲しがること、と捉える。

ブランドの品は、品質が高い傾向にあると思われるため、その品質を求める人もいるだろう。この場合は、高品質なものが欲しいという動機であるため、ブランド志向とは呼ばない。あくまでも、「ブランドであること」がそれを欲しがる主な原因となっている場合のみをブランド志向とする。

 

ブランド志向の分析

ブランドという言葉の意味は、「ある商品やサービスを他のものから区別するあらゆる特徴」[1]である。一般的にブランドと聞いて連想するのは、ブランド名、デザイン、ロゴなどのシンボルなどであろう。

この意味は、あくまでも形式的な意味である。実質的に重要なのは、ブランドが、類似した他の商品やサービスよりも優れていると思わせるものであるということである。たとえば、人気のブランドの場合、そのロゴがつくか否かで、他の商品とは全く値段が異なる。機能的には、そのロゴがついていても特に差はないにもかかわらずにである。

では、なぜそのようなブランドを求めるブランド志向が存在するのか。

ブランド志向である以上、求めているのは、ブランドのみである。そして、ブランドが他のものよりも優れていることを意味する記号であるのだとすれば、ブランド志向が求めるのは、他のものと比べた優位性であるということになる。

そして、その優位性の根拠は、それがそのブランドであることにしかない。つまり、ブランドは、自ら優位性の記号を商品やサービスに付与している。そして、ブランド志向はその作り出された優位性の記号が欲しいが故にブランドを求めている、といえる。

 

ブランド志向の心理

ではなぜ、そのような記号が欲しいのか。それは、「他のものより優れている」ということそのものが欲しいからであろう。つまり、何らかの実際的な根拠に基づいて優れているのではなく、ただ優れているとされているという証明が欲しいのである。

このようなブランド志向の心理は、一体どういうものなのか。ブランド志向が優位性そのものを求めているということは、物事の相対的な優劣を重視しているということである。つまり、ブランド志向の人は、物事に優劣の序列をつけるような価値観をもっているということだろう。それゆえに、事物を序列的に判断するのである。

このような序列化する価値観は、何かを序列化したいという傾向であって、何らかの根拠があって、それに基づいて自らの意志で序列化するわけではない。要するに、序列化したいということが、その序列を生み出す根拠に先立っているのである。

また、優れているとされているという記号によってブランドを求めているため、序列を決定する価値の根拠を自律的にはもっていない。つまり、ブランド志向をもっている本人がブランドに価値を見出しているのではなく、ブランドが生む記号に対し、社会が価値を見出しているのである。

そのため、ブランド志向は、価値基準を社会に依存していることになる。

 

ブランド志向の今後

昨今、均質な社会が解体され始めている。その結果として、統一的な価値観が失われてきているだろう。(この記事で論じた)

そうなると、従来ブランドに価値を見出していた社会が弱体化することになる。結果として、従来のブランドは不安定化し、ブランド志向もまた同様に不安定になるだろう。

そうなった場合、何かに価値を見出すという行為を、社会という外部に委ねることができなくなる。社会はかつてのように統一的な価値を見出し提示することはないからである。多極化が商品やサービスにおいても生じているといえるだろう。

こうしてできた空白に対して、個人はどのように対処するかが求められているだろう。特に、ブランド志向のように、社会の価値基準をそのまま取り入れていた人はそうである。

おそらく今後、この空白は、新たに価値を作り出すことを掲げた、小規模な求心力のある集団によって分割されるだろう。そして、従来のブランド志向はこの小集団に追従するか、あるいは、優位性の記号そのものから離脱することになるだろう。

 

 

注釈

[1]https://en.wikipedia.org/wiki/Brand