よく、「今年も1年あっという間だったね」といった言葉を聞く。「時間が経つのは早いね」という言葉も聞く。そして、年齢と時間の流れが関係しているということも聞く。それによると、年をとるほど体感時間が早くなるというのだ。では、年をとったから時間は早く流れるものだといって済ませてしまうのは癪に触る。どうすれば、「あっという間」をなくせるのか。どうすれば、しっかりその時間を過ごした感覚を得られるか。それを考えるためにはまず、身近な時間感覚について思い起こす必要があると思う。
時の流れを早く感じるとき・遅く感じるとき
「あっという間」を無くすには、「あっという間」だったときを思い出し、それを避ければいい。ということで、時間があっという間に過ぎるときとは一体どういうときだろうか。
・小学校の頃の遠足
・楽しみにしているテレビ番組
・面白い映画
・旅行
・休日
これらは、時間があっという間に過ぎる。そして、それをしている間は楽しい。つまり、楽しい時間は早く過ぎるといっていいかもしれない。
逆に遅く感じるときはどういうときか。
・宿題をやっているとき
・CMの間
・つまらない映画
・仕事
・平日
これらは、本当に時間を遅く感じる。ということは、「どうすれば時間をしっかり長く感じられるのか」という結論は次のようになる。
これならば、「あっという間」ではなくなるだろうが、人生が楽しくなくなる。それは困るので、別の策を考えたい。
食事における「早い」「遅い」
時の流れとよく似た現象として、食事があるだろう。大好物やとても美味しいものを食べるときは、夢中になって食べるあまり、「もうなくなっちゃった」と感じることが多い。逆に、嫌いなものを無理に食べさせられるときには、いつまでも減らないので、「食べても食べても無くならない」という感覚があるだろう。
これを時の流れで置き換えると、時間を長く感じさせるためには、嫌いなものを食べればいいということになる。しかし、これは嫌である。では、好きなものを食べるとどうなるか。あっという間になくなる。だが、さらに食べ続けることも可能である。そして、いくら好きなものとはいえ、無限に食べることはできない。いつか、満腹になる。すなわち、満足する。満足とは、これ以上はもういらないということである。つまり、さっきまであれだけ欲していた好物が、もういらない対象になるということだ。
したがって、「もうなくなっちゃった」と感じるということは、まだ満足していないからであり、満足してしまえば、「もういらない」ということになる。つまり、食べ物において、好きなものがすぐなくなると感じるのは、それが不足しているからであり、それが過剰になれば、満足し、もう不要になるのである。
同じようなことは、時の流れでもいえるだろう。
楽しいことをしながら時を長く感じる方法
いくら好物でも、食べ続ければいらなくなる。それと同じで、いくら楽しいことでも、それをし続けると、飽きてくる。つまり、それが過剰になると飽きて、もうしたくなくなる。遠足や旅行だって、長期間すれば飽きるだろうし、テレビや映画も同じだ。そうなれば、もうしたいとは思わなくなる。
ここから言えることは、時の流れを、「何かをしているときの時の流れ」として捉えたとき、それが「あっという間」とか「早い」と思うのは、それが時間的に不足しているからである。この「あっという間」を解決するためには、それを飽きるまでやればいい。飽きるまで旅行をすればいいし、飽きるまで映画を観ればいい。そうして飽きたならば、また別の好きなことをすればいい。
つまり、「あっという間」とは、食事と同様、まだやり足りないという不足であり、飽きるまでやれば、それは過剰になりもうやりたくなくなるため、時が早いとは感じなくなるということである。
人生における時を長く感じる方法
時の流れとは、こうした一つ一つの行為の積み重ねであるということを考えると、以上のことを行えば、人生において「あっという間」ということはなくなるだろう。
例えば、「1年間があっという間」という場合、1年間という長さは決まっているため、その期間の間で、どれだけ過剰に何かを行なったかということが大事になってくる。個々の行為においては、その行為の長さの過剰さが重要なのだが、ある期間においては、その過剰さをどれだけの回数発生させたかが重要にある。つまりは、期間の密度を高める必要がある。
ある期間の密度を高めることで、その期間そのものが自分にとって過剰なものになるといえるだろう。そういった過剰な期間が日常となると、日常そのものに飽きや疲れがくることになる。すると、すでに「あっという間」な時間からは解放されたことになる。
まとめ
結論として、どうすれば「あっという間に時が過ぎなくなるか」ということの答えは、好きなことを過剰にすることとなった。あるいは、嫌なことをすることでもいいのだが、それはやりたくないため却下される。
そして、時が早く感じるということは、ある一つの行為においてみれば、その時間の長さの不足であり、長期的な日常においてみれば、それは密度の不足であった。人間とは難しいもので、好きなもの・ことであっても、それが過剰になると、飽き飽きし嫌気がさすようになる。だが、それを利用することで、好きなことをしながら、好きなことに特有な「あっという間」さをなくせるということがわかった。